fc2ブログ

Entries

国府小学校#3-4 感動のクライマックス!

 さあはじまってしまいました、分割戦闘!
 あらためてまとめると、

  小屋内部:ファイター×2、ウィザード×2
             vs
       悪魔道師・剣ゴブリン・杖ゴブリン
 
  小屋外部:シーフ×2
         vs
       剣ゴブリン・弓ゴブリン

 だ、だいじょうぶか……?


 そんな心配をよそに戦闘は着々と進みます。

 「外組」は結構な深手を負いますが、なんとかゴブリンたちを退治することに成功。
 対する「中組」が魔術攻撃×2に押され気味……
 という展開になりかけたものの、剣ゴブリンを倒してしまえば一気に制圧ムードに。
 
 考えてみれば、分割戦闘になったおかげで戦いは少人数対少人数に。
 おかげで、それぞれに「責任感」というか「参加した! 感」が強く出せたかなー、と思います。
 このおかげで以前にポイント4として挙げていた「探索をすばやく!」については、根っこの「戦闘をがっつり!」という目的は達することができました。
 これも彼らのアグレッシブな行動のおかげ……かな……?




 そんなわけで、戦闘は授業時間を5分残して終了しました。
 ということは……?

 さーて、ここからが今回のセッション最後の見せ場です!

 おさらいはこの記事のポイント5・「村人が野菜をくれる、という申し出にどうするか」。
 困窮する村人からなけなしの野菜を差し出されたとき、受け取ればそこでセッションは終了です。
 もし断ったとしたら、村に伝わる「古い剣」をゲットすることができます。

 さて、彼らはどんな受け答えをするでしょうか?

GM:帰ってきた皆さんを見て、村人たちが駆け寄ってくる。「皆さん! 無事に戻ってこられたということは……?」
シャウ:野菜は半分残ってるよ。
GM:「良かった!」「これで明日からも暮らしていけるぞ!」と喜びの声を上げる村人たち。「本当に、皆さんにはなんとお礼を言ったら良いか……」
スペディオ:よかったね!
GM:「本当にありがとうございます。ぜひ、皆さんにお礼をさせてください」「いや……、しかし何も持っていってもらえるようなものは……」
一同:……
GM:そこで村人のひとりが、「そうだ! 村長、野菜を差し上げましょう。」
スペディオ:でも……
GM:村長は少し考えた後、頷きます。「決して高価なものではありませんが、我々にはこれぐらいしかありませんので……」
ディアノーグ:うーん……。
スペディオ:困ってるんだよね。もらえないよね。


 良い子達だなぁ……。

 この反応ならフラグを立てて、真・報酬の話をしてあげようかな……?
 それともきっぱりと断るのを待とうかな……? 

 と考えていた、そのときです。

レッドバーン:そうだ。野菜も半分に減っちゃったんだし……

 
 ん?

レッドバーン:この保存食、あげるよ!


 え……?

 確かに、キャラクターシートの持ち物欄には「保存食:6食」と書いてあります。これはデフォルトの持ち物なので、最初から個数まで印刷されています。
 レッドバーンは、彼の宣言が終わるのも待たず、その数字を「保存食: 5食」に書き換えてしまいました。

シャウ:じゃあ僕も渡す!
ブリードルイ:俺も俺も!

 レッドバーンの宣言はあっという間に他のプレイヤーにも波及し、全員のキャラクターシートには「保存食: 5食」が並びます。

 …………

 みんな……

GM:では村長が、こう言います。「そんな、そこまでしていただいて……助けていただいたうえに、大切な食料まで……」
レッドバーン:大丈夫だよ。
GM:「しかし、ここまでしていただいて何もお礼を差し上げないというわけにも……」



 さあ、君たちのおかげでここから先を読み上げられるぞ。

GM:「そういえば村長。アレはどうですか?」「ああ……ちょっと皆さん、待っていてくれませんか?」そういって、村人に何かを取りに行かせる村長。
シャウ:なになに?
GM:戻ってきた村人の手には、一本の古い剣。
ディアノーグ:おお!?
GM:「これは村に残された古いものなのですが、我々には使うこともできませんし、売ろうにも相手がおりません。ぜひ持っていってはいただけませんでしょうか?」
ディアノーグ:おおー!
レッドバーン:やったー! その剣、俺の!!


 おーい(笑)

レッドバーン:だって俺ファイターだもん! 剣持ちたいー。
GM:待て待て(笑)
ブルースター:錆びてるからそのままじゃ使えないんじゃない?
レッドバーン:そっかー。
GM:とりあえずレッドバーンが受け取ったって事で、この剣をどうするかは後で相談しよう。
シャウ:そうしよう。
GM:「皆さんのおかげで明日からも元気に暮らしていけます。お達者で!」そう言う村長さんたちに見送られながら、皆さんは、この村を後にしたのでした……




 ……ということで、今回のダンジョンはおしまいです。
 手弁当で働くどころか依頼人に持ち物まで差し出すとは……ザ・仕事人である冒険者としては、この先が思いやられます。

 しかし、しかし……

 僕たちも「野菜、断るかなー?」「いや難しいんじゃない……?」という予想で臨んだダンジョン。
 「フラグ」などと冗談交じりに書いてきましたが、子どもたちの行動はただの条件分岐では計りきれないものでした。 
 たった一食の保存食、それが6つあったところで村の困窮が救われるわけではありません。しかし、それを差し出すことが、困っている村人たちを勇気付けることになるでしょう。
 それは「結果を左右する」以上の影響を、物語世界に与えてくれました。
 同時に、セッション参加者にも……です。

 TRPGはフィクションです。
 全ては架空の話で、本当はそこには何も無いとみんなが分かっている遊びです。
 でもその中で交わした会話、その結果として生じた感情は彼ら自身の「反応」であり、彼ら自身の中にあるものです。それを感じたこと、それに従って行動を起こしたこと……彼らの心に残り、これからも影響を続けてくれると良いと思います。

 最後のきっかけを出したのがあのレッドバーンだというのが、またなんとも心地良いところ(笑)
 彼の「思ったことを口にしちゃう」という素直っぷりが悪いほうに転んだ場面も、たくさんありました。
 しかし、そんな彼だからこそ、感じた善意を迷わず表に出せる。
 「役に立つか・立たないか」とか「損か得か」という以前に、「じゃあこうしてあげようよ!」と発言し、行動することができたのだと思います。

 もちろん、彼らは食料を実際に渡したわけではありません。しかし、「キャラクターシートを書き換えた」のは現実の世界での行動であり、彼らの心と行為の証拠です。
 この書き込みこそセッションの「成果」であり、「古い剣」以上に意味のある痕跡となるでしょう。

kou_3-7.jpg


 彼らにとっても、僕たちにとっても。

  
 
スポンサーサイト



コメント

[C56]

すごい!
感動してしまいました。

もし、自分が同じ状況だったとしても、「保存食をあげたところで足しにはならないしな」なんて考えてしまい、出来なかったあるいはやらなかったと思います。

子供の純粋さに教えられました。
  • 2010-08-04 08:31
  • アゲハ
  • URL
  • 編集

[C57] Re: タイトルなし

アゲハさま

> 感動してしまいました。

 ありがとうございます!
 子どもたちにも伝えてあげたいです!

> もし、自分が同じ状況だったとしても、「保存食をあげたところで足しにはならないしな」なんて考えてしまい、出来なかったあるいはやらなかったと思います。

 僕自身、同じ行動は取れないだろうなー……と思います。
 「村にとって野菜は「出荷用の商品」という意識もあるだろうし、仕事として受けた以上は……」とか色々考えてしまいそうですね。
 「野菜がダメになって困っている → 食料をあげれば助かる!」という素朴な善意を発揮できるのは、子どもたちだからこそだと思います。
 そんな「童話的な優しさ」を今は大切にしてあげられればと思います。
 (「出荷がどうの……」などのシブい世知辛さは、中学生ぐらいになってから・笑)
  • 2010-08-05 07:41
  • ほくろん
  • URL
  • 編集

[C61] シンプルな優しさ

彼らが「何か出来ないか」と考えた結果で、素晴らしいです。
GMの意図の上を行くプレイを見せる、という点で、TRPGプレイヤーとしても優秀ではないでしょうか。

欲をいえば、更にもう一歩、「保存食じゃ解決しない」ってのを説明してもよかったかと思うのですが。
「好意から出た迷惑」ってのを説明するには早すぎますね。

[C63] Re: シンプルな優しさ

白神さま
 お返事遅くなりました、ほくろんです。

> GMの意図の上を行くプレイを見せる、という点で、TRPGプレイヤーとしても優秀ではないでしょうか。

 その意味では、子どもたちは常にこちらの意図・考えていたことを超え出た発言をしてくれます。
 このメンバーで遊んでなかったらこうならなかっただろうな……という触れ幅が異常に大きいというか……
 
 いや、良い意味でも悪い意味でも、ですが(笑)

> 欲をいえば、更にもう一歩、「保存食じゃ解決しない」ってのを説明してもよかったかと思うのですが。
> 「好意から出た迷惑」ってのを説明するには早すぎますね。

 あの時点では、彼らの発言を受け止めてあげることに専念をしました。
 もし同じメンバーでもう一度、同じようなシチュエーションになったら、次はちょっと深くリアクションしても良いかな……?
 なんて思いますが、正直な話、「プレイ時間が足りなかった!」というのも掘り下げなかった理由の1つなので……難しいところです。
  • 2010-08-17 00:15
  • ほくろん
  • URL
  • 編集

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://dice4kids.blog57.fc2.com/tb.php/42-4c1f26f2

トラックバック

Appendix

『冒険王道』ページへ

↓ カテゴリリンク

国府小学校 牛久保小学校 なぜTRPG? 制作の裏側 その他

プロフィール

ほくろん

Author:ほくろん
愛知県内にて青少年育成の指導者・アドバイザーをしつつ、TRPGやボードゲームの作成・普及啓発を行っております。

今となっては遠く離れ、それぞれに凝固している教育とあそびを、少しずつ暖めながら融和させていきます。

管理人がフェイスブックはじめています。
登録名は『冒険王道』の著者名です。
(あくまで個人アカウントですので、ご承知置きください)