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サマースクール2011 4日目 前編

 白いローブの男の罠を切り抜け、古代のゴーレム軍団をなぎ倒し、ついにエオーラの町にたどり着いた一行。
 村に伝わる古文書を神殿へと届け、ひとまずはミッション完了。
 彼らが次にやることといえば……

ゼロ:アイテムとか買えないの?
GM:そう! 新しいまちにこれば、新しいアイテムがあるぞ。もちろん新しい武器も。
バスター:やったー! 見せてー!
GM:その前に、ここで手に入る武器はまだみんなでは使えない。
デニス:えー!
GM:使うために、先にレベルアップだ!

 久々の中級ルール解説のコーナー。
 中級では追加武器と、レベルアップのルールが追加されます。
 
 実はセッションごとに「経験点」が与えられていました。
 それがある数字まで溜まると「レベル」が1つあがります。
 レベルが上がることで、主に能力値とHPがあがります。
 
 そしてお楽しみの追加武器は……

  110915_WEP.jpg

 このように、使用する能力値に制限があり、実質的にレベルによって使える武器が決まります。

 今回のレベルアップ&買い物の結果、

  デニス: ブロードソード → カトラス
  バスター: スリング → ハンティングボウ
  ゼロ: ショートスピア → サーベル
  スペディオ: 魔道書(変更なし)

 となりました(ライボルトはお休みです。)
 デニスは体力自慢なんですが、カトラスは「わざ・感覚」で戦闘力が決まる武器。つまり彼には向いていません。
 アドバイスしようかな……と悩みましたが、本人はずいぶん気に入っているみたいなので良しとしましょう。
 
 さて物語にもどりまして……

GM:では買い物の翌日。古文書を届けてから、2日が経ちました。皆さんが泊まっている宿屋に一人の男性がやってきて、皆さんを呼びます。
デニス:誰だ!?
GM:「神殿からの使いのものなんですが、デイジー村の冒険者の皆さんですよね?」
バスター:「そうだよ」
GM:「神官が皆さんをお呼びです。一緒にいらしてください。」

 彼に連れられて神殿に移動すると、ものものしい顔で神官が待ち構えていた。

GM:「おお、きてくれたか。古文書を届ける任務はご苦労じゃった。」
スペディオ:どうかしたんですか?
ゼロ:もしかして古文書盗まれた!?
GM:「いや、まだ盗まれてはおらんよ」
スペディオ:”まだ”……?

 含みのある表現には反応が鋭いスペディオ。

GM:「そうじゃ。実は昨日の夜、神殿の周りで怪しい男を見たという話があるのじゃ。ちょうど君たちが届けてくれてすぐの事件じゃからな。何か関係があるといかんと思って呼んだのじゃ。」
デニス:こないだの盗賊でしょ!
GM:「あやつはしっかり罰を受けておる。今日も神殿周りの掃除じゃ(笑) やつではないし、実はエオーラのまちに怪しい人物が入ったという話も無いのじゃ。というのも……」

 エオーラのまちは市壁に囲まれ、人間の出入りは基本的にチェックされている。
 ここ数日で怪しい人物の出入りがあったとは思えないという。

GM:そこでじゃ。その人物の正体を突き止めて、捕まえてきてはくれんか?」
バスター:報酬は!?
GM:「もちろん用意しよう。ひとり120Gじゃ。」

 恒例の値段交渉のすえ、お値段据え置きで依頼を受けた一行。
 さっそくまちへ繰り出して、怪しい人物探しです!

 まるで刑事モノか探偵モノみたいですが、これはシティアドベンチャーと呼ばれるタイプのシナリオ。
 プレイヤーはGMの用意した事件を調査し、謎を解き明かします。
 今回探るべき『謎』は怪しい男
 
 ・ どうやってまちに入ってきたのか
 ・ どこに潜んでいるのか
 ・ その正体は何者か


 その真相はエオーラのまちに隠されています。
 どこに行けば情報が手に入るのか? 誰が真実を握っているのか?
 それを予想し、事件の裏を暴く……ダンジョンアタックとは一風変わったスリルが楽しめます。

 とはいえ現在ほぼノーヒント状態
 考えるのに必要な情報はこちらから提供しなければいけません。

 まずは……
 
 110915_1.jpg 

GM:はい、これがエオーラのまちです。
バスター:怪しい人はどこにいたの?
GM:「神殿の入り口から、周りをぐるっと見ようとしていたらしいぞ」
スペディオ:怪しい……
デニス:まちの壁を乗り越えて入ったんでしょ。
GM:「警備がおるからの。その目を盗んで入るのは困難じゃ。」
バスター:でも他に無いよねぇ。
デニス:いいじゃん、壁見に行こうよ! 壁!
ゼロ:どこの壁?
デニス:じゃあ、こっち(西側)の壁!

 と、デニスがいつもの当てずっぽうを発揮したところで……

スペディオ:先に怪しい男のことを聞いたほうがいいんじゃない?
デニス:なんで?
スペディオ:神殿以外で怪しい人を見たかもしれない。
バスター:誰に聞く?
スペディオ:お店の人とかに聞いてみる?

 ということでここは2手に分かれての情報収集。
 まずは……

■ 壁チェック組

GM:デニスとゼロは西の門の近くまで来た。他のまちからくる旅人が門でチェックを受けてます。
デニス:壁は? よじ登れそう?
GM:道具をそろえればやれるかもしれないねぇ。

スペディオ:門番に聞いてみたら?
バスター:スペディオ、そこにいないよ
スペディオ:そうだった! 聞いてないフリして(笑)

GM:どうするのー?
ゼロ:じゃあ門番に話を聞く(笑)

 門番の話では……

GM:「はっはっは、そりゃ絶対無いとは言い切れないぜ。でも夜も警備をしてるし、なにより壁を登ったら跡が残るからな。見落とすってことは無いぜ」
デニス:そうか……
ゼロ:ここじゃなさそうってことかな。


■ 聞き込み組

GM:お店で聞き込みするのは、スペディオとバスターね。まちの大通りは、両側にお店が立ち並び、たくさんの人であふれています。
スペディオ:神殿に近いほうの人に聞いてみよう。
バスター:「怪しい人見ませんでしたかー?」
GM:じゃあそこは八百屋、答えるのは店のおばちゃん(笑) 「怪しい人ねぇ……あんたらみたいなのはいっぱいいるけどね」
スペディオ:「僕たちは怪しくありません!」(笑)
GM:「あたしらからしたら同じようなもんよ(笑)」と話していると、お店で買い物してた人が。「そういえば、うちの周りを変な人がうろついているってうわさ、あったわよ。」
バスター:「どこですか?」
GM:「うちはこっち(南西)にあるんだけど、普段はよその人は入ってこないの」そのへんは住宅街だから、冒険者とかは行かないってことね。
スペディオ:「いつごろから?」
GM:「2~3日前からかしら?」
スペディオ:それかも! 「ありがとうございました!」


■ 壁チェック組・その2

デニス:ねえねえ!
GM:どうした?
デニス:このまちのことなら、こないだの盗賊が知ってるんじゃないの?

 この間の……
 そう、パーティーを卑劣な罠に仕掛けながら、最終的にお付の料理人になっていた彼のことです。
 彼がプレイヤーたちをだますよう依頼されたのはここエオーラのまち。そのことを、デニスは覚えていたのでした。

GM:盗賊君は、罰として神殿の掃除中。今も神殿の周りにいるんじゃないかな?
ゼロ:話してみようか。
デニス:よっしゃ! おい盗賊!


 前回登場した脇役から情報収集する。

 これ、すっかりGMの想定外でした。
 でも確かに、蛇の道は蛇。盗賊なら何か知ってそうです。
 なにより、いかにもTRPG的な展開じゃありませんか!
 
 ということで、ここからはアドリブで情報を出し始めるGM。
 調子に乗るあまり、だんだんとコントロールを失って行く様子 (えっ……?)をお楽しみください。

GM:えー盗賊君は、ほうきで神殿前を掃いています(笑) 「あ! お久しぶりっす!」
デニス:おい盗賊! 怪しい人を知らないか!
GM:「え、俺のことっすか?」(笑)
ゼロ:「神殿の周りで怪しい人がいたらしいんだけど、何か知らない?」
GM:「そうですね~……」としばらく悩んだ後。「……手がかりを知ってそうな人なら紹介できるかもしれません」
デニス:なに?
GM:「……ちょっとこっち来てください」と、道の端っこに呼ばれ、周りの様子を伺いながらしゃべります。「実は、このまちには裏の人間が集まる酒場があるんでして。」
ゼロ:どこに?
GM:「場所は、その……案内します。そこにいけば、裏の事情に詳しい人がいますんで……」
ゼロ:うーん。どうする?
デニス:悪い人たちが集まってる場所なんだよね?
GM:「まあ悪い人って言うか、アレですな。俺みたいなやつの溜まり場ですんで。」
デニス:いやー、それは……
ゼロ:とりあえず行ってみようよ。どんな場所かもわかんないし。

 いぶかしく思いながらも、これは貴重な手がかりがつかめるかもしれない。
 そう考えた2人が盗賊に案内されてやってきたのは、東門近くの細い路地。

  110915_2.jpg

 そこにあったのは木の看板が掲げられた、こじんまりとした酒場。
 中に入ってみると……

  110915_3.jpg

GM:中はこざっぱりした、いたって普通の酒場だ。盗賊は「ちょっと待っててくだせぇ」といって、奥にいる屈強な男に声をかける。
デニス:え、どうしよう? 入り口で待ってる?
ゼロ:待ってるほうがいいでしょ。

 珍しく控えめなデニスと、冷静なゼロ。
 しばらく待つと、屈強な男と話をつけたのか、盗賊が手招き。
 2人が合流するやいなや、奥の扉に手をかけます。
 扉をあけると……

GM:葉巻だろうか、何かの煙が流れ出てくる。部屋の中は煙でいっぱいで、いくつかの丸テーブルの上につるされたランプの明かりだけが照らしている。もちろん、部屋の隅までは明かりは届いておらず、全体的に薄暗い。

 と、ノリノリで演出しながらマップを書くGM。

  110915_4.jpg

 固唾を呑んで聞き入っているデニスと、細かく質問をしてくるゼロ。

GM:で、盗賊が奥のテーブルに座っている男にぺこぺこと挨拶をしている。「みなさん、この方がここのボスです」
ゼロ:話、してみる?
デニス:うん。「怪しい男を捜してるんですけど」
GM:「怪しい男ねぇ……ここには怪しいやつらばっかりだよなぁ?」そういうと、周りの机にいたほかの男たちがへへへっと笑う。
デニス:「やっぱりお前らかっ?」
GM:「何の話かわかんねぇな?。」

スペディオ:怪しい。
GM:待て、本当に何の話かわからん(笑)
バスター:ねえ、スペディオここにいないって(爆笑)

ゼロ:「神殿の周りで何かしていたらしいんですけど」
GM:「お前ら神殿の依頼で動いてんのか。そんなやつが俺たちの店に来るなんてなぁ」といって盗賊の方をにらんでいる。ヘコヘコする盗賊君(笑)
デニス:ねえ、知らないならもう出ようよ。
GM:「はん? 知らないって俺が言ったか?」
ゼロ:「じゃあ教えてください」
GM:「まあ教えても良いが、ひとつだけ条件がある。」
デニス:「なんですか?」
GM:「この店のこと、俺たちから情報をもらったってこと、神殿には言うんじゃねぇ。バレるといろいろ厄介だからな。」
デニス:「やっぱり! 悪いことしてるから言えないんだろ!
GM:「悪いこと? そりゃ“怪しいやつら”の集まりだからよ。」といってにやにやしているぞ



 どうですかこの悪の巣窟感。
 

 やりすぎでした。


デニス:どうする?
ゼロ:話を聞いてみようよ。
デニス:でも悪い人だよ?
ゼロ:どのくらい悪いかわかんないよ。
デニス:じゃあどのくらい悪いか、聞いてみればいいじゃん!
GM:(えっ、本人に!?)
デニス:「悪いことって何してるんですか?」
GM:(そろそろあせり始めている)「いや、そりゃ言えねぇけどよ、いろいろあんだよ。運んじゃいけねぇもん運んだりよ。

 これが思いついたぎりぎり許されそうな悪いことでした。
 いや、いまさら「悪くない人たち」ってするわけにもいかず……

 納得してくれるかな?

デニス:「じゃあ、人を襲ったりする?

 YESと答えれば情報収集がどん詰まり。
 NO と答えれば、ワルキャラ台無し。

 ど、どうしよう……

GM:(うーん……)「ま、人様の命を奪うようなことはしてねぇ。」
デニス:じゃあ物を盗んだりはする?
GM:(えー……)「ははは、少なくとも町ん中で泥棒したりはしねぇさ。」


 善悪に具体的なラインを引こうとするデニス。
 1つ1つ答えて行くと生々しすぎるので、煙にまく作戦に出ているGM。
 このあとも、同様の質問はすべてはぐらかしていきます。

デニス:えー、どうしよう!?
ゼロ:いいじゃん、話聞くだけなんだから。
デニス:でも悪い人なんでしょ!? 神官さんから怒られるよ!

 思ったよりもローフルなプレイヤーだったデニス。
 二人では結論が出ない、ということでスペディオ・バスターと合流して……
 
 大会議です。

スペディオ:うーん、後から協力してもらったのがバレるとなぁ……
ゼロ:バレないでしょ。話さなければいいんだから。
スペディオ:でもさ、「ほう、どこでこの情報を手に入れたのかな?」って言われたらどうすんの?
デニス:ほら、やっぱり怒られるよー。
バスター:聞かれたらさ、ここのこともしゃべっちゃえばいいじゃん
スペディオ:そうしたら酒場のボスに狙われるんじゃない?
デニス:絶対絶対狙われる! 危ない!
バスター:そこまでするかなぁ。
ゼロ:しゃべんなくても良いって。どのくらい悪いのかもわかんないし。
デニス:だからさ、聞いてみようよ。ね、そんなに悪くはないんだよね?
GM:「そうだなぁ(ニヤニヤ)」
デニス:なんだよーっ(爆笑)

 まさかココまで倫理的な判断で議論になるとは思いませんでした。
 結構な負担を強いてしまったことは申し訳ないと思います(特にデニス

 思いますが……

ゼロ:大丈夫だって、うまくやればバレない。
バスター:ここで話を聞ければ依頼クリアだね。
スペディオ:でもさ、本当に情報持ってるのかな?
バスター:あ、そっか! まだ分かんないね。
ゼロ:でも聞くだけなら損はないよ。
デニス:ね、思いついた! 先に神官さんに聞けば良いじゃん!
ゼロ:何を?
デニス:悪いやつに協力してもらっても良いかって!
ゼロ:いやいや、良いとは言わないだろ(笑)
スペディオ:それに、話したら結局は酒場のボスが怒るでしょ。
デニス:そうだ! 危ない!(笑)

 なによりリスクの分析から入るスペディオ。
 「怒られること」が心配で、協力を仰ぐのが悪いことじゃないという保証が欲しいデニス。
 情報入手を第一に、打算的に立ち回れば良いというゼロ。
 そもそも問題を感じてない楽観的なバスター。

 みんな自分なりに答えを出してくれています。
 それがキャラクターとしての判断ではなく、プレイヤーとしての判断になってしまっているのは善し悪しでしょう。
 特に今回はプレイヤー自身の倫理的な基準にまで踏み込んで考えさせてしまっています。ゲームとしては”重い”のかもしれません。
 ただ、それは彼らが感情移入、あるいは自己没入して遊んでくれているからこそです。それぞれに状況について真剣に考え、妥当な答えを導きだそうと精一杯、TRPGを遊んでくれています。
 (正直、GMの「悪の酒場」演出は「ファンタジーっぽさ = 既知の物語の再現」を安易に求めていました。子どもたちは、物語のパターンに由来する「それっぽさ」を楽しむのではなく、視聴者ではなく行為者として、TRPGの状況に対峙するのだということを深く胸に刻まれました。)

一同:(がやがや ←「どう神官さんに話せば”嘘をついた”ことにならないか」を相談している)

 子どもたちに投げかける課題の適切さについて反省をしつつ(けっこうマジ反省です)、悩みながらも満足げに議論する彼らを見て胸を撫で下ろします。

 そろそろ、着地点を見極めなければいけません。

GM:「さ、どうすんだ? 情報は欲しいのか?」

 プレイヤーたちの答えは―!?


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ほくろん

Author:ほくろん
愛知県内にて青少年育成の指導者・アドバイザーをしつつ、TRPGやボードゲームの作成・普及啓発を行っております。

今となっては遠く離れ、それぞれに凝固している教育とあそびを、少しずつ暖めながら融和させていきます。

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登録名は『冒険王道』の著者名です。
(あくまで個人アカウントですので、ご承知置きください)